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遺言書

相談内容

ケース1
 Xさん(74歳 男性)は、妻に先立たれ、現在は一人暮らしです。Xさんには、Y・Zの二人の息子がいましたが、とても仲のよい兄弟だったので、Xさんは二人が自分の死後、遺産争いをしないよう遺言を遺しておこうと考えました。
 どんな注意点があるでしょうか?

ケース2
 甲さん(56歳 男性)夫妻は、やや痴呆が進んでしまった母親乙さん(82歳)の介護をしながら生活していました。乙さんには、もう一人息子の丙さん(54歳 男性)がいましたが、丙さんとは離れて暮らしていたため、あまり交流がありませんでした。
 そして、乙さんが亡くなり、遺言書が見つかったというので、甲さん・丙さんは家庭裁判所で検認の手続を行いました。しかし、そこには、「全ての財産を甲に譲る」と書かれていたのです。驚いた丙さんが遺言をよく見ると、乙さんが痴呆症を発症した後の日付が記載されていたのです。
 もちろん、甲夫妻は、乙さんの面倒を見ていたので、丙さんとしても、財産を均等に分けてほしいと思っているわけではありませんが、自分が何も相続できないのはおかしいと思っています。
 丙さんはどうしたらよいでしょうか。

解決方法の一例

1 ケース1
 通常作成される遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つがあります。
 ⑴ 自筆証書遺言
   自筆証書遺言は、全文を自筆で記載して、日付を記入し、押印するだけで作成で
  きます。全文を自筆で記載する必要があるので、一部をワープロ書きしたものは有
  効な遺言とはなりません。
   自筆証書遺言は簡単に作成できますが、その反面、偽造や変造、隠匿、盗難、本
  当に遺言者の筆跡なのかなどの、様々な問題が生じる可能性があります。また、訂
  正方法が厳格に定めれており、これを満たさない場合には形式不備により遺言は無
  効となってしまいます。
   なお、自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認が必要です。

 ⑵ 公正証書遺言
   公正証書遺言は、公証人役場で、公証人が作成する遺言です。
   公正証書遺言は、自筆証書遺言よりも費用(公証人の手数料として5万円程度)
  や手間がかかってしまいますが、その分作成された遺言にミスはなく、公証役場の
  金庫に保管されますので、偽造等の心配はありません。

 ⑶ 遺言作成の注意点
   遺言作成にあたっては、まず自身の財産を正確に調査する必要があります。これ
  を怠ると、遺言にない財産をめぐって争いが生じる可能性があります。
   また、財産を調査したのち、誰にどの財産を相続させるかを考えることとなりま
  すが、特に不動産は評価が難しいため要注意です。不動産の価格は固定資産税を評
  価するために便宜的につけられているものもあり、価格が付いていても売却できる
  とは限りません。

検認…家庭裁判所で、遺言を開封する手続。検認によらず遺言を開封しても遺言自体
   の効力に影響ありませんが、5万円以下の過料となります。

2 ケース2
 ⑴ ケース2の遺言は自筆証書遺言?公正証書遺言?
   ケース2では、遺言書が発見され、家庭裁判所で遺言の検認が行われていますの
  で、自筆証書遺言であることがわかります。
   ケース2は、自筆証書遺言の典型的な問題点なのです。

 ⑵ 遺言の無効確認訴訟
   ケース2では、遺言は乙さんの意思に基づいて作成されたものではなく、甲が偽
  造したものであるとして、遺言が無効であることの確認を求めて裁判所に訴訟を提
  起することができます。

 ⑶ 無効確認訴訟に敗訴した場合
   遺言無効確認訴訟に敗訴した場合にも、丙さんは遺留分減殺請求をすることがで
  きます。遺留分とは、相続人に最低限保証された相続分で、今回の場合丙さんには
  相続財産の4分の1が遺留分として認められます。
   ただし、遺留分減殺請求は1年以内に行わなければなりませんので、あまりゆっ
  くりしていると、丙さんは何の権利も得られないこととなってしまいます。

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 今回の場合、ケース1では、遺言作成の一般的な注意点をアドバイスすることができ、これによって、遺言が無効になるリスクは相当回避されるものと思います。
 また、ケース2では、訴訟や遺留分減殺請求権など、丙さんの権利を実現する手段をアドバイスすることが可能です。

 これ以外にも、遺言執行者を選任しておくことで、遺言の内容を正確に反映することができます。当事務所にご相談いただければ、遺言執行者についてもお受け致します。


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